Actinobacillus actinomycetemcomitansの血清型特異多糖遺伝子群を指標として血清型を迅速かつ簡便に決定するために、各血清型を規定している遺伝子を単離しDNAの塩基配列を決定しなければならない。本研究ではまず、まだ血清型特異多糖抗原合成遺伝子が同定されていない血清型a、d、eの株より、目的の遺伝子群をクローン化し、その構造を明らかにした。血清型dおよびeの血清型特異多糖抗原合成遺伝子群は、bあるいはcの同遺伝子群との類似性から比較的容易に単離し、構造を明らかとすることができた。それらの結果はBiochim.Biophys.Acta(1999)1489:457-461および(2000)1493:259-263に発表した。血清型aの血清型特異多糖は、他の血清型の特異多糖とは合成経路が全く異なっており、類似性を手掛かりに遺伝子を同定することができなかった。そこで、トランスポゾンを用いて血清型特異多糖欠損株を作製することで、同遺伝子群を同定し塩基配列を決定した(Biochim.Biophys.Acta(2000)1517:135-138)。それらの遺伝子群の中から、血清型cにのみ存在する6-deoxy-L-taloseを合成する遺伝子を同定し、この遺伝子が他の血清型には存在しないことを明らかにした(J.Biol.Chem.(2000)275)。以上の結果より、それぞれの血清型に特異的な塩基配列を選び出すことが可能になり、実際に血清型特異プライマーを設計した。合成したオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行ない、人の口腔内から採取した試料の中に存在するA.actinomycetemcomitansの血清型を決定する条件を見出すことができた。その成果は、J.Clin.Microbiol.に投稿した。
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