研究概要 |
本年度は、ヒトに発症した唾石症において、その画像診断学的変化と病理学的変化との相関について検討を加えた。対象は16名の顎下腺唾石症患者。画像診断としてMRI,CTおよび唾液腺造影を行った。MRについてはT1-weighted imageおよびfat-suppressed T2-weighted imageおよびshort inversion time-inversion recovery法を用いて撮像した。MR造影剤についてはこれを用いなかった。以上の画像所見を臨床症状並びに手術により得られた摘出標本の病理所見と比較検討した。 結果は以下の通り。 1)顎下腺唾石症はMRIにより、3つの型(TypeI〜III)に分類することができた。 2)TypeIは、何らかの臨床症状とMRI上での以上所見があるもので、病理組織学的には強い炎症所見を呈するもの 9名(56%)。 3)TypeIIは、臨床症状は無いものの、MRIでは以上所見が認められるもので、病理組織学的には脂肪の広範な沈着が特徴的である 4名(25%)。 4)TypeIIIは、臨床症状も、MRIの以上所見も認められないものである 3名(19%)。 CT像もこれらMRI像と非常によく相関していた。さらにCTは唾石の存在部位その個数を知るのにMRIより有効であり、唾石の存在部位と臨床症状との間にも相関があり、それが上記の3つの型となって、分類できる要因になっていると思われた。 これらの結果より、MRIは顎下腺の唾石症の病態をよく反映することが認められた。これらの結果は、第38回歯科放射線学会総会 軽井沢 平成10年にて口演し、またAJNR20:1737-1743,1999に掲載された。
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