昨年はヒトに発症した閉塞的唾液腺炎(唾石症)に対して、T1強調spin echo、脂肪抑制T2強調fast spin echo、short inversion time inversion recoveryといった従来のMR法にて、唾石症の病態について検討を行ったが、本年度は現存する最高速のMRI技術であるエコープラナーイメージング(Echo Planar Imaging;EPI)を用いて、拡散強調撮像を行い、水分子の拡散という新しい面から、唾石症を含めた様々な唾液腺の病態の検討をおこなった。また唾液腺疾患患者のみでなく、健常ボランティアを用いて正常耳下腺、顎下腺各腺体部の、みかけの拡散係数(apparent diffusion coefficien;ADC)の正常値をもとめた。結果は以下のとおり。 1.健常者では耳下腺のADCは顎下腺のADCより高かった。2.シェーグレン症候群患者の耳下腺のADCは病期で異なっており、健常者のADCと差がないものとそれより高いものがあった。 3.唾石症の患者では罹患側顎下腺のADCは健常側より高い場合と差がない場合があった。 4.急性耳下腺炎の患者では罹患側耳下腺のADCは健常側より著名に高くなっていた。 以上のようにEPIを用いた拡散強調撮像を行うと、ADCを求めることで唾液腺の病態を定量的に評価することが可能であることがわかった。また今回行ったシングルショットのEPIでは、-回の撮像時間は160秒と非常に高速でmotion artifactにも強いという利点を備えている。今後、拡散強調撮像を用い、定量的に病態、進行状態の把握を行うだけでなく、各唾液腺疾患の特徴を捉え、鑑別診断への応用の可能性についても検討を行いたいと考える。これらの結果は第40回日本歯科放射線学会総会、岐阜、平成12年にて口演した。今後研究をすすめ、論文にまとめる予定である。
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