報告者は現時点まで、1)歯周病関連グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、グラム陽性菌の口腔レンサ球菌全菌体、Micrococcus luteus全菌体あるいはその粗細胞壁画分などを、細菌細胞壁ペプチドグリカンの要構造に相当する合成ムラミルジペプチド(MDP)を前投与したマウスに静脈注射すると、アナフィラキシー様ショック反応を惹起する事実、2)LPSによって誘導されるショックの機序として、血小板の末梢血から肺への急激な移行と、血小板の臓器での凝集、崩壊に随伴した急性の組織崩壊が成立し、MDPは本反応を増強している事実を明らかにしてきた。さらに、3)抗補体剤を供試した実験から、本ショック反応には補体が関与していることを突き止めた。そこで、本研究の当初の立案した計画に基づいて、マンナンやラムノース、グルコースなどを構成多糖として含有する口腔レンサ球菌の細胞壁がレクチン経路により、補体を活性化し、血小板崩壊に続発して本アナフィラキシー様ショック反応が起こるとの仮説を提起し、その真相究明を手掛けた。口腔レンサ球菌の研究が進行していく中で、コントロールとしてのマンノースポリマー(MHP)を構造的に具備したKlebsiella O3(KO3)LPSに極めて強力なショック誘導作用が認められたので、当初の計画を軌道修正し、MHP保有LPSを供試する実験を実施した。その結果、1)MHP保有LPSが強力な血小板反応を惹起すること、2)MHP保有LPSは、ヒトマンノース結合レクチン(MBL)と結合して、血清中のC4を捕捉して、補体系を活性化することを証明し、論文にて発表した。
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