副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨芽細胞に作用して、コラーゲン分解酵素や破骨細胞活性化因子であるODF(osteoclast differentiation factor)の発現を誘導することで、骨吸収を促進させるカルシウム代謝調節ホルモンである。本研究では、transformした骨芽細胞株(UMR106など)に比べ、よりin vivoの条件に近い初代培養骨芽細胞を用いて、PTHの骨吸収作用機構の解明を試みた。また、ラットのMMP-1、MMP-13、ODFおよびOPG(osteoprotegerin)のcDNAプローブを作製した。そして、比較のために操作の容易な骨芽細胞様骨肉腫細胞株であるUMR106において、これらのプローブを用いて、PTHを作用させた場合の、MMP-1およびODFmRNAの発現への影響をノーザンブロット法で解析したところ、いずれも3時間後に発現がピークとなり、MMP-1は24時間後までピークのレベルが維持されたが、ODFは漸減した。このPTHによる上昇作用はいずれも細胞内cAMPレベルを上昇させるフォルスコリンで代用され、ODFに関してはH89で阻止されたことからプロテインキナーゼA(PKA)の経路が関与することが示唆されたが、MMP-1の上昇はH89では阻止されなかったことから、PKA経路とは別の経路が関与することが予想された。さらに初代培養骨芽細胞を得るために、摘出した新生児ラットの頭蓋冠にcollagenase-trypsinを段階的に作用させるたところ、3〜5回作用させた分画で生理的に活性なPTH受容体のレベルが高かったので、この分画を以降の実験に用いることにした。
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