微細径ファイバースコープによる顎関節腔内の立体観察を試みてきた。 昨年は装置、三次元画像システムの改良、2チャンネルのイメージファイバーを1つの外套管にまとめ、左右の眼にそれぞれのチャンネルの画像をヘッドマウントディスプレイ上に投影することで左右の視差を利用した、正しい立体視のできる微細径関節鏡が開発できた。今年度はこの方法を臨床に応用し関節腔内病変が疑われた症例において検討した。その一例は顎関節のMR画像検査で滑膜性軟骨腫症の疑われたもので、本検査法で軟骨瘤の存在を確認後、共同研究者の開発した生検用微小鉗子を用いて生検を行った。生検の結果滑膜性軟骨腫症と診断された。一方関節腔内の線維性病変の描出においては、癒着部位や穿孔部位の確認に有効であり、二重造影画像上での存在部位においても一致していた。さらに造影検査に続いて行われる関節腔内剥離授動術を行う上では線維性病変の存在位置の把握が治療効果を左右する一因であり、そのアプローチとしても有効であった。。 実際には関節鏡検査および剥離授動術は単独では行えない。しかし、現時点では立体観察が可能なのは術者だけである。各種の操作を行う上でアシスタントとの連携をスムーズにする必要があり、そのためには立体画像の表示方法にさらなる改良が必要であった。 関節腔内の三次元的状態の把握は、線維性病変や腫瘍性病変の診断に有効であり、関節鏡視画像に慣れていない者でも三次元的な位置の認識が可能なので、関節鏡の操作が容易になる可能性を示すものであった。
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