研究概要 |
従来より直接覆髄には水酸化カルシウム製剤が用いられているが、本剤は歯髄に壊死層を形成するなどの問題がある。また、BMPやコンポジットレジンの応用も試みられているが、ころらも直接覆髄材として用いるには様々な問題点があるのが現状である。そこで、象牙質と同様の間葉系組織である骨や軟骨の分化および石灰化を促進する植物レクチンの一つであるコンカナバリンA(conA)が修復象牙質の形成促進に有用であると考え、ラット培養歯髄細胞を用い、細胞形態の変化、分化および石灰化能について検討した。 生後8週齢のウィスター系ラットの切歯より無菌的に歯髄を取り出し、トリプシンおよびコラゲナーゼを用い酵素処理後、単一な細胞を採取し、それを1回継代した細胞を実験に供した。これらの細胞にconAを3,5,10,20μg/mlの濃度で24時間作用させたところ、細胞は扁平な形態から球形へと濃度依存的に変化した。しかし、20μg/mlの高濃度ではほとんどの細胞は死滅しており、これは毒性が強いためと考えられた。次いて、DNA合成を^3H-thymidineの取り込みにより測定したところ、濃度依存的に抑制された。さらに、分化・石灰化能を^<35>S-sulfateの取り込み、ALPase活性の測定により検討したところ、これらは濃度依存的に促進傾向にあった。以上の結果よりconAは修復象牙質の形成に有用であることが示唆された。conAの至適濃度、作用時間等は、測定方法や採取した細胞群により異なるように思われた。今後これらの点を解決すると共に、その他の分化マーカーの動態についてもタンパクレベル、分子レベルでの検討を行い、さらにサルを用いたin vivoの実験も行いたいと考えている。
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