研究概要 |
植物レクチンの一つであるコンカナバリンA(conA)が修復象牙質形成に及ぼす影響を検索する目的で、ラット培養歯髄細胞を用いた細胞増殖能、基質合成能、石灰化能の検討、並びにカニクイザルの歯牙を用いた病理組織学的検討を行った。 ラット培養歯髄細胞は、8週齢Wistar系ラットの下顎切歯より歯髄を酵素処理後単離した細胞を一度継代し用い、細胞がコンフルエント到達時にconAを5,10,20μg/μlの濃度で24時間作用させ検討した。細胞増殖能を^3H-thimidineの取り込みにより測定したところ、conAは濃度依存的に抑制し、20μg/μlで約80%の抑制効果を認めた。基質合成能及び蓄積量は^<35>S-sulfateの取り込み、トルイジンブルー染色により検討した。^<35>S-sulfateの取り込みは、細胞層では濃度依存的に促進し、逆に培養上清への遊離を抑制した。総計では僅かに促進した。添加5日後にトルイジンブルー染色を行いdyeを抽出し640nmで測定したところ染色性は濃度依存的に増し、20μg/μl群で無添加群の約1.5倍であった。石灰化能はBessey-Loery法によるALPase活性の測定、カルシウムC-テストによるCa含量の測定により検討した。ALPase活性はconAの濃度依存的促進効果がみられ、添加5日後に20μg/μl群で無添加群の約1.5倍であった。Ca含量も同様の効果がみられ、添加15日後に20μg/μl群で無添加群の1.5倍程度となった。また、カニクイザル(4y,6kg)の歯牙に露髄窩洞を形成し、その露髄面から生理食塩水(生食)、2μgまたは20μgのconAを含む生食をそれぞれ50μl注射した後アパタイトライナー/GICで封鎖した。30日後の歯髄反応はいずれの群も炎症は認めず、また両conA投与群の露髄部周辺に大型の紡錘形細胞の集積を認めた。Dentin Bridgeの形成は、生食群は僅かであったが、conA投与群では、部分的〜閉鎖に近い形成量で、2μg群より20μg群の方がその量は多かった。以上より、conAを直接覆髄材として応用できる可能性が示唆された。
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