研究概要 |
報告者はこれまでに、TGF-βとbFGFがヒト歯髄細胞の増殖と分化の調節に関わり、両増殖因子が象牙質再生に有用であることを示唆した(Shiba et al.,1995,1998)。近年、組織再生を誘導する方法に、発生時の組織形成の機構が応用されている。象牙質の再生においても、発生時の内エナメル上皮細胞と歯乳頭間葉細胞の相互作用を応用できる可能性がある。そこで、ウサギ切歯が継続的に歯を形成していることに着目し、上皮・間葉系細胞の相互作用を解析する細胞培養モデルの確立を計画した。この研究では、象牙芽細胞のマーカーのひとつであるアルカリホスファターゼ(ALPase)活性を指標に、ウサギ切歯歯髄由来上皮細胞様細胞(PE)が線維芽細胞様細胞(PF)に及ぼす影響について検討し、以下の結果を得た。 (1)ALPase活性は、PFあるいはPEの単独培養では低かったが、PF・PEの共培養系では、著しく高い活性を示した。(2)組織化学的検索によって、PF・PEの共培養系において、PFはPEに比べて高いALPase活性を示し、特に、PEに近接したPFは高いALPase活性を示した。 本細胞培養モデルを用いたPFとPEの共培養によって、PFのALPaseの発現が誘導される可能性を示した。象牙芽細胞や前象牙芽細胞は、歯髄の未分化な間葉細胞に比べて、高いALPase活性を有しているというこれまでの結果と本研究の共培養実験の結果から、歯髄由来上皮細胞が歯髄由来線維芽細胞様細胞の分化に重要な役割を担うことが考えられた。本細胞培養モデルは、上皮・間葉系細胞の相互作用を解析するうえで有効であることが示唆された。
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