臨床の場において歯周治療後や歯肉退縮に伴い発症した象牙質知覚過敏症は、適切なプラークコントロールにより症状の緩和や自然治癒する傾向が認められている。そこで、本研究ではプラークコントロールと象牙質知覚過敏症とのかかわりを明らかにする目的で、プラークコントロールが象牙質知覚過敏症を惹起させた象牙細管の形態に及ぼす影響をin vivoで検討した。本研究ではヒトと歯牙組織が類似したビーグル犬生活歯を用いた。全身麻酔科にてビーグル犬の左右大臼歯頬側歯頚部にV級窩洞を形成し、知覚過敏を想定して酸処理を行い象牙細管を開口させた。なお、その際象牙質知覚過敏症を惹起した直後の象牙質試料片を採取し、これを術前の試料とした。片額は所定の期間(1週、2週、3週)、毎食後ブラッシングを行うプラークコントロール群とし、他方はプラークコントロールを行わない対照群とした。所定の期間後、全身麻酔下のビーグル犬から採取した象牙質生検試料の走査型電子顕微鏡による象牙細管の形態観察を行った結果、プラークコントロール群の象牙細管は封鎖傾向を示し、対照群の象牙細管は開口傾向を示した。また、象牙細管の開口面積の経時的な変化を定量的に検討するために画像解析装置を用いて象牙細管の開口面積を測定し、術前からの開口面積の変化の割合を開口度と定義し算出した。その結果、実験を開始してから1週後では両群間の開口度(プラークコントロール群;97%、対照群;116%)に差はほとんど認められなかったが、2週目以降になるとプラークコントロール群(2週後;53%、3週後;36%)と対照群(2週後;141%、3週後;303%)の差が顕著となり、プラークコントロールが象牙細管の封鎖に効果を及ぼすこと、すなわち、プラークコントロールが象牙質知覚過敏症の自然治癒を促進させることが示唆された。
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