研究概要 |
今日までに私達は、歯髄の創傷治癒にc-jun・jun-Bが重要な役割を果たしていることを示唆してきた(1997、J.Dent.Res.、76、822-830;1999、J.Dent.Res.、78、673-680)。今回の研究では歯髄創傷治癒における細胞死制御機構を明らかにするため、9週齢ラット第1臼歯に窩洞形成を行い、TUNEL法、免疫組織学的手法および透過電顕を用いて細胞死制御の一形態であるアポトーシスの関与を検討した。その結果、1.窩洞形成により象牙芽細胞を含む歯髄細胞に2段階でアポトーシスが誘導されること、また、2.窩洞形成後の歯髄創傷治癒において、障害を受けた細胞のアポトーシスによる処理機構が修復象牙質形成前に働くことが明らかにされた(2001.J.Dent.Res.、in press)。さらに、形成する窩洞の深さ(残存象牙質の量)と歯髄創傷治癒過程に生じるアポトーシスとの関連や、一定の深さの窩洞に充填した各種覆髄材料が歯髄創傷治癒過程に与える影響をアポトーシスをマーカーとして検討したところ、1.窩洞の深さを変えることにより、創傷治癒過程に生じるアポトーシスの出現量が変化すること、また、2.覆髄材料の種類によって、アポトーシス細胞の量やその分布が異なることが明らかになってきた(2001,第114回日本歯科保存学会2001年度春季学会)。これらの結果は、今後、学会発表を経て投稿する予定である。
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