研究概要 |
【研究目的】外傷による内部吸収の再現は困難である。そこで,循環障害を起こした際の歯髄変化をモデルとし,特に,破歯細胞とマクロファージの動態について観察し,内部吸収のメカニズムを明らかにする。 【材料と方法】生後8週齢のwistar系雄性ラット50匹を用いた。全身麻酔下で被験歯である上顎右側切歯を抜歯し,Belzer UW Solution中で根基部歯胚相当部を切除した後,直ちに抜歯窩に再植した。対照歯は無処置の上顎左側切歯とした。観察期間を14,28,60日とし,観察期間終了後通法に従って連続切片を作成した。染色はHE染色ならびにTRAPを用いた酵素組織学的染色と,ED1,ED2を使用した免疫組織化学染色を行った。観察は光学顕微鏡にて行った。 【結果】1.対照歯歯髄ではTRAP染色,抗ED1抗体に対する陽性反応は認められなかった。抗ED2抗体に対する陽性反応はわずかに認められた。2.実験歯歯髄では術後14日では歯髄側象牙質の吸収が観察された。吸収窩内ではTRAP染色,抗ED1抗体による陽性反応は認められた。抗ED2抗体に対する陽性反応はわずかに認められた。3.実験歯歯髄では術後28日では抗ED1抗体に対する陽性反応は増加が歯髄全体に認められた。抗ED2抗体に対する陽性反応はわずかに認められた。4.実験歯歯髄では術後60日では抗ED1抗体に対する陽性反応は特に切縁側歯髄に増加が認められた。抗ED2抗体に対する陽性反応はわずかに認められた。 【考察】実験歯歯髄の吸収窩ではTRAP陽性反応が認められ,象牙質吸収に関与していると考えられた。ED1陽性反応は,実験歯歯髄の14日後から徐々に集積し,抗原の歯髄への侵入に積極的に応答していることが推測された。
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