(目的)PTH(副甲状腺ホルモン)の象牙芽細胞の分化に及ぼす影響を調べるために、我々が確立したラットの切歯由来の歯髄細胞培養系にヒトPTHを以下に示す条件で投与し、象牙芽細胞の分化マーカーについて検討した。 (方法)5週齢のSDラットの下顎切歯の歯髄より酵素によって分離してきた培養歯髄細胞にPTHをそれぞれ50ng/mlの濃度で6時間の間欠投与と連続投与の条件で処理して、20日間培養した。検討した分化マーカーはCa含有量、石灰化結節の数、オステオカルシンの合成量とmRNAの発現量である。 (結果)6時間の間欠投与ではCa含有量と石灰化結節がコントロールに比較して有意に増加した。一方、連続投与においてはコントロールに比較して石灰化結節が有意に低下していた。同様に象牙質の基質合成のマーカーであるオステオカルシンの合成量とmRNAの発現量はコントロールに比較して6時間の間欠投与した細胞において有意に増加していた。また、連続投与した細胞ではオステオカルシンの合成量とmRNAの発現量共にコントロールに比較して低下していた。 (考察と結論)これらの所見はPTHの投与方法によって歯髄組織に存在する未分化な間葉系細胞から象牙芽細胞様細胞への分化に対する作用が異なることを示唆している。すなわち間欠投与は分化を促進し、連続投与では逆に抑制することが分かった。今後さらに細胞内での情報伝達経路のメカニズムについて詳しく検討してゆく予定である。なお、本研究の一部は1999年9月の歯科基礎医学会に発表した。
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