本研究では、排膿の止まらない難治性根尖性歯周炎の病態を把握する目的で、炎症性細胞による一酸化窒素(Nitric Oxide:NO)合成能に関する病理組織学的、分子生物学的検討を行うことを計画した。また、NO合成阻害剤のin vitroにおけるNO合成の抑制効果を比較することで、治療薬としての臨床応用を検討する予定である。今年度は、難治性根尖性歯周炎患者から採取した根尖部病巣組織を試料とし、誘導型NO合成酵素(inducible NO synthase:iNOS)タンパクの産生ならびにIL-1あるいはE-セレクチン(CD68E)産生との関連を検索したところ、以下の結果を得た。 1.外科的に摘出した根尖部病巣組織のパラフィン切片をヘマトキシリンーエオジン重染色したところ、27症例中16例が歯根嚢胞で、11例が歯根肉芽腫であった。 2.ヒトiNOSを特異的に認識するアミノ酸の塩基配列をもとに、ペプチドを合成しウサギに免疫した。その後、腹腔内溶液を精製し、SDS-PAGEで分析を行った。 3.歯根嚢胞(上記20例)の凍結切片を免疫染色した結果、炎症性細胞のiNOS産生を検出し、特に血管周囲に著名な局在が観察された。 4.歯根嚢胞の凍結切片に対し、抗ヒトiNOS抗体と抗ヒトIL-1またはCD68E抗体を用いた二重染色をおこなったところ、血管周囲の細胞や血管内皮細胞でiNOSおよびIL-1の著名な産生を認めた。また、血管内皮細胞におけるiNOSの発現とCD68Eの発現は一致する傾向にあった。
|