本研究では、排膿の止まらない難治性根尖性歯周炎の病態を把握する目的で、血管内皮細胞による一酸化窒素(Nitric Oxide:NO)合成能に関する病理組織学的、分子生物学的検討を行った。また、NO合成阻害剤によるNO合成の抑制効果を比較することで、治療薬としての可能性を検討することを計画した。昨年度は、難治性根尖性歯周炎患者から採取した根尖部病巣組織を試料とし、血管内皮細胞による誘導型NO合成酵素(inducible NO synthase:iNOS)の産生ならびにIL-1あるいはE-セレクチン(CD68E)の産生を確認した。本年度は血管内皮細胞を分離したのちNOならびにiNOS産生を検討し、加えてNO合成阻害剤の効果について検索したところ、以下の結果を得た。 1. 臍帯静脈をコラゲナーゼ処理し、得られた細胞浮遊液から通法に従い臍帯静脈血由来血管内皮細胞(HUVEC)を採取した。 2. P.gingivalis-LPS、IL-1およびインターフェロンγによる混合刺激を行ったHUVECを用いてGriess試薬または免疫染色によって検索したところ、NOならびにiNOSの産生を認めた。 3. 2.の培養HUVECにL-アルギニン誘導体(L-NMMA、L-NIO)を加えたところ、コントロールに比較して著明なNO合成の低下を認めた。 4. 2.で得られた培養HUVECからRNAを採取し、ヒトiNOS特異的プライマーを用いたRT-PCR法による遺伝子発現を検索したところ、そのほとんどで明らかなiNOS遺伝子の発現が確認された。
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