本研究は、実験用動物として、ヒトの歯と解剖形態および組織構造において非常に近似した歯を有するカニクイザルを使用し、炭酸ガスレーザーを根管および髄室床に応用することにより、根管壁と髄室床部の象牙質ならびに周辺歯周組織への影響を組織学的に観察を行い、歯内治療における炭酸ガスレーザーの臨床応用の可能性を検討することである。 実験動物として、歯根完成永久歯を有するカニクイザル2頭を用い、被験歯には比較的根管が太い上顎前歯と上顎臼歯、下顎臼歯を使用し、上顎では舌側根管、下顎では遠心根管を主に使用した。なお髄床部象牙質も併せて観察した。 実験方法は、動物に全身麻酔を施し、当該歯周囲歯肉に局所麻酔を施した。ラバーダム防湿下で被験歯を露出させ、髄室開拡および歯髄の根中間位切断を手用のリーマーとKファイルを用いて#50の太さまで行い、根管内を洗浄・清拭し、根管および髄室床に照射した。炭酸ガスレーザー装置は、Panalas C10(松下産業機器社製)で、照射条件は、先端出力:3〜6W、モード:スーパーパルス(SP)、照射時間:20秒前後を種々に組合わせて設定した。処置後、根管および髄室床部に水酸化カルシウムを応用し、グラスアイオノマーセメント裏層後、光重合レジンを填塞し、実験期間は1日、2週、4週とした。顎骨ごと歯を摘出、10%中性ホルマリン液中に浸漬固定、歯ごとに切り出し、一部の試料は光顕観察を行い、他の試料は電顕(SEM)観察を行った。 光顕観察において、1日例では、歯髄の壊死性変化、炎症性変化が強くみられ、2および4週例では、正常歯髄が多く残存していた。また、電顕(SEM)観察では、髄室床の象牙質表面は、象牙細管が溶融し、薄膜が形成されていた。
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