臨床分離したヒト歯髄細胞(DP細胞)をコンフルエントに達するまで培養した後、代表的な炎症性サイトカインのひとつであるインターロイキン-1(IL-1)を所定濃度範囲(50〜1600pg/mL)で所定時間(1〜48時間)作用させた後、RT-PCR法およびイムノブロット法を用いて、DP細胞の接着分子Intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)発現におよぼすIL-1の影響について検索した結果、次のような知見を得た。 (1)DP細胞は無血清培地条件下において、ICAM-1mRNAならびにICAM-1タンパクを恒常的に発現することが明らかとなった。 (2)DP細胞のICAM-1mRNAならびにICAM-1タンパクの発現は、IL-1添加によって促進された。しかし、50〜1600pg/mLの範囲では、IL-1濃度の違いによるDP細胞のICAM-1mRNAとタンパクの発現に差は認められなかった。 (3)IL-1添加によって活性化されたDP細胞におけるICAM-1mRNA発現の時間的なピークは3〜6時間であった。 以上のことから、実際の歯髄組織の炎症の場では、DP細胞のICAM-1発現が亢進していることが推測される。ICAM-1は好中球の接着分子LFA-1やMac-1と結合する機能を有していることから、DP細胞の発現するICAM-1は、好中球の炎症局所への浸潤過程において何らかの役割を果たしている可能性が示唆される。
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