研究概要 |
唾液は咀嚼、嚥下、発音、消化など様々な役割を有しているためにその機能の喪失は、種々の障害をもたらす。また、その機能低下を来す多くは高齢者であるため急速に進む近年の高齢化社会においては、唾液分泌機能の評価法はますます重要になると思われる。 その中でも小唾液腺の分泌量の定量測定方法については確立されたものがなく、今回は上顎義歯の維持に関係の深い口蓋腺の分泌量の定量的測定方法の確立を目的としてその測定方法の再現性について検討を行った。 まず、本研究の目的および方法について了解を得た健常有歯顎者5名に対し安静状態における口蓋腺唾液分泌量の測定を行った。筆者は口蓋腺の分布が広範囲に及ぶこと、また、その分泌量が少量であることが汗腺と類似していることに着目し、微量の発汗の検査方法である和田・高垣法を口蓋腺の唾液分泌量の測定方法に応用した。具体的には3%ヨード無水アルコール溶液とひまし油を溶媒としたデンプン溶液を含ませた安性濾紙を一定時間(5s,15s,30s)乾燥させた口蓋に貼付し、唾液の分泌を沃素・デンプン反応の黒紫斑点として濾紙上に印記した。これを3回繰り返した。 次に変色部分をスキャナーでパーソナル・コンピューターに画像入力しそのデジタル画像をPhotshopを用いて画像処理し、画像解析・計測ソフトウェアで面積を測定し,その測定値を唾液分泌量としてあらわし光磁気ディスクに保存した。そして、測定時間毎に測定値のばらつきを分析したところ、どの測定時間においても有意差は認められなかった。よってこの口蓋腺唾液分泌量の測定方法には再現性があることが示唆された。
|