高齢者における顎関節雑音の頻度について明らかにし、さらに咬合状態、特に義歯装着との関係について分析することを目的とする調査を実施した。対象は、老人病院入院中の患者約360名のうち、本調査に対して協力が得られた者は201名(男性75名、女性126名)であった。本研究ではこれらのうち65歳から85歳までの年齢のもの138名(男性55名、女性83名)を分析の対象とした。調査の結果以下に示す結果が得られた。 1.対象とした138名のうち、残存歯により咬頭嵌合位が定まっている者は19名(全体の13.8%)であった。残存歯により咬頭嵌合位が定まらない者119名のうち、義歯を使用している者は68名(全体の49.3%)、残存歯により咬頭嵌合位が定まらず、かつ義歯も使用していない者が51名(全体の37.0%)であった。 2.顎関節雑音は全体の18.8%の者に認められた。顎関節雑音を有する者の頻度は、女性において男性よりも高頻度であった。 3.残存歯により咬頭嵌合位が確立しない者を義歯使用の有無により分類し、顎関節雑音発現頻度を比較した。その結果、男性における顎関節雑音の発現頻度は、義歯使用群で4.0%、義歯非使用群で26.3%であった。女性における顎関節雑音の発現頻度は、義歯使用群で11.6%、義歯非使用群で34.4%であった。男女いずれにおいても義歯使用群と義歯非使用群の顎関節雑音発現頻度には有意差が認められた。 今後は、義歯の状態や咬合圧と顎関節症状との関係についても分析していく予定である。
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