本研究では、17-19週齢の雄の日本産白兎に、ネンブタールによる全身麻酔下で、脛骨近位骨幹端部左側にHA、右側にTi-coatの異なる表面性状のシリンダータイプのインプラントを1本ずつ埋入した。被験数は6羽とした。10週の骨治癒期間後、埋入したインプラントを露出し、アバットメントと上部構造を連結した。上部構造の上面をインパルスハンマーにて垂直に打診した。インパルスハンマーとインプラント埋入部より遠心10mmの部位で骨髄内に固定した小型圧力センサーで得られた信号を専用の増幅器を介して高速データ収集カードでコンピュータに取り込み、分析を行った。インパルス打診試験終了後、試料を4%パラホルムアルデヒドにて固定後、組織標本を作製した。 打診試験より得られた結果として、インパルスハンマーから観測されたインパルス継続時間では、HAで162μsec、Tiで167μsecと、HAの方が短かった。骨髄圧はHAで48mmHg、Tiで42mmHgとTiの方が小さかった。骨髄圧の振動はTiの方が周波数は高く、逆に、HAの方がその振動の収束が早い傾向にあった。また、HAでは個体間での差は少なく、Tiの方は大きかった。さらに、インパルス継続時間と骨髄圧にはいずれのインプラントも負の相関関係が認められた。組織学的検索においては、HAとTiでインプラント周囲の骨構造において著明な差は認められなかった。強拡大でのインプラント-骨界面の観察については、HAの周囲には菲薄な層状の新生骨が認められたが、Tiにおいては確認できず、インプラント体は骨髄と接している状態であった。 今後、さらに、経時的にHAとTiインプラントの物理量の差異を比較し、組織学的なインプラント-骨界面状態を検索し、その物理量とどのような関係があるかを検討する必要であると考えている。
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