研究概要 |
近年,生理学的あるいは免疫学的手法を用いた研究から顎関節症の発症にメカニカルストレスが関与しているとの指摘がされるようになってきている.一方,顎関節の骨構造の退行性変化も同部に加わる慢性的な負荷の存在を示唆し,それが顎関節部の疼痛や関節円板の位置異常などの原因となっていることが推察されている.しかし,顎関節症患者における顎関節の形態変化については不明な点が多く,形態変化が適合性変化として生じた結果的なものか,あるいは今後さらなる変形をきたす進行性のものかなど,その予測は困難である.すなわち,形態変化を評価する場合には時間的因子を考慮して,その間に発生している現象を評価する必要がある.そこで,本研究の目的は,コンピュータグラフィックスを用い顎関節症患者の顎関節多層断層X線滋真から三次元的顎関節形態を再構築し,その形態を立体的に評価したのち,下顎頭と関節窩間の顎関節隙を計測することにより関節隙狭小部を特定し,顎関節構造の経時的な変化を評価することで,顎関節部における負荷を検討することである. 今年度は,ヘリカルCT MPR画像による顎関節の撮像条件の最適化を計るための計測精度の評価を行った.乾燥頭骸骨の下顎頭を3次元座標測定器にて計測し,その計測値を真値とし,同下顎頭のCT撮影値と比較した.実測データとCTデータをコンピュータグラフィックターミナル上で重ね合わせたところ,現時点での誤差は,下顎頭前後軸方向で4.73%であった. 次年度は同下顎頭を数種の撮像条件でヘリカルCTにて撮影,最適条件を決定した後,徳島大学歯学部附属病院を受診し,インフォームドコンセントが得られヘリカルCTにて顎関節撮影を行った顎関節症患者を解析対象とし,臨床症状と比較検討する予定である.
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