ウシ皮膚コラーゲンのコハク酸修飾 前年度と同様に、ウシ皮膚コラーゲン(CSC)に無水コハク酸を作用させて、CSCの塩基性アミノ酸残基側鎖にコハク酸を導入し、酸性から中性の広いpH範囲で可溶なコハク酸化CSC(SCSC)を調製した。 円二色性(CD)測定 三重らせん規則構造を持つ未変性状態のコラーゲンはCDスペクトルにおいて220nmに正、194nmに負のバンドを示す。pH3においてコラーゲン濃度一定下(C(SCSC)=0.1mM)でPAA濃度(C(PAA))を増加すると、混合比R(≡C(PAA)/C(SCSC))=0.65付近でスペクトル強度が減少し沈澱が生じることが前年度の実験より明らかになっているが、さらに過剰のPAAを添加すると再溶解が起こり、未変性コラーゲンと同じスペクトルが現れた。このことから、再溶解後もSCSCの高次構造は三重らせんであることがうかがわれた。スペクトルがほとんど消失するR=0.65付近でのSCSCの高次構造と、SCSC/PAA複合体の再溶解の機構についての検討が今後の課題に残された。 ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC) 前年度のGPCの予備実験ではSCSCは紫外吸収(UV)、示差屈折率(RI)のいずれの検出器でもモニターできることが確かめられた。これに対して固有の発色団がないPAAはRIでの検出が期待されたが、実際にはほとんど検出されなかった。また、CD測定の条件ではSCSC/PAA複合体が析出してしまい、析出のない低濃度条件はGPCシステムの検出限界以下となるため、この系はこのままではGPCに適さない。両高分子間の相互作用に影響を与えない程度に、大きな吸光係数を持つ発色団をいずれかの高分子に導入するなどの工夫によって、低濃度での分析が可能になると考えられ、この方法による問題解決が今後の課題となった。
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