研究概要 |
本研究では口腔内温度時効硬化性金合金を板状に鋳造した後に中央で切断し,切断した2つを付き合せ,金型で固定し,レーザー溶接した.レーザー溶接にはNd:YAGレーザー(TLL7000,Tanaka Laser)を使用した.レーザー溶接の条件を出力320A,パルス幅10ms,スポット径1.0mmに固定した.レーザー溶接は幅3.0mmの試験片の片方からレーザーのスポット径(1.0mm)が重ならないように3回のレーザーを切断線上に垂直に照射した.また,Controlとして切断していない板状鋳造体も用意した.各試験片には以下の3つの熱処理を施し,熱処理を施さないAs-castのままの試験片も用意した.1)ST:溶体化処理(700℃,5分間)2)HA:高温時効処理(ST後250℃,15分間)3)IA:口腔内温度時効処理(ST後37℃,3日間)熱処理後の試験片は硬さの測定を行った後に接合強度試験に供した.破断時のFracture force(Ff;N)を求めた.また,破断面のSEM観察を行った.熱処理後の硬さ(VHN)はそれぞれ,As-cast:224±6,ST:148±5,HA:279±8,IA:248±11であった.溶体化処理後の口腔内温度の時効でこの金合金の硬さは高温で時効した時の硬さに近づいた.Controlの試験片でST後に口腔内温度で時効させた試験片(IA)のFf値は高温で時効させた試験片(HA)のFf値と有意な差(p>0.05)は認められなかった.レーザー溶接したIA試験片のFf値はHA試験片のFf値には及ばなかったが,As-cast試験片およびST試験片のFf値に比較して有意に高い値を示した.As-cast試験片とST試験片のFf値に有意差は認められなかった.SEM観察ではレーザー溶接部位の結晶粒が微細化していることがわかった.
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