脱アセチル化度50%のキトサンを賦形材として用い、α-TCPの顆粒を配合した複合骨補填材をラット骨内に埋入し、さらに、埋入試料体表層部にアルギン酸カルシウム被膜を形成させた。埋入2週および4週後における骨再生状態を病理組織標本および明視野顕微鏡付きデンシトグラフから得られた画像データを用いて解析した結果、以下の知見が得られた。 2週目の病理組織標本からは、硬化被膜を使用せずに補填を行ったコントロール群には、補填材の漏出、線維性結合組織の迷入などが認められたが、被膜を形成させた骨補填材群では骨窩洞表層部に、アルギン酸カルシウムが停留している所見が確認された。デンシトグラフを用いて計測した骨接触率は、被膜形成を行った骨補填材群が被膜形成を行わなかった骨補填材群および補填材を適用しなかった群に比べて大きかった。また、結合組織の形成は、両群と比較して少ない傾向が観察された。新生骨の形成に関しても被膜を形成させた群が、コントロール群よりも良好であった。 4週目では、被膜を使用しないコントロール群には、被膜形成を行った骨補填材群と比較して、やや多くの線維性結合組織が認められた。全群とも骨窩洞内では新生骨が広範に確認され、良好な所見が確認された。骨接触率および骨新生率ともに、被膜形成を行った骨補填材群と骨補填材のみの群との間に有意な差は見られなかった。しかし、被膜形成による骨補填材群とコントロール群との間には、骨新生率においてのみ有意差が認められた。 上述の結果より、骨補填材の表層にアルギン酸塩硬化被膜を形成させることにより、補填初期における補填材の漏出、線維性結合組織の迷入などを防ぐことが可能となり、骨伝導性を促進する効果があることが示唆された。
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