研究概要 |
岩手県大野村在住で在宅訪問に協力できる在宅者を対象に実態調査を行い,以下の結果を得た. 1.全身疾患と障害区分について 障害区分においては,特に肢体不自由,内部疾患の順で多く,全身疾患では脳血管障害の罹患既往が最も多く,在宅主要原因となった.肢体不自由や言語障害は脳卒中の後遺症によるものがほとんどで,服用薬は脳卒中後の後遺症に伴う意欲改善のための投薬が最も多かった. 2.口腔内について 全体の残存歯数の平均は6.7本,65〜69歳の全国平均の12.7本(平成5年)を大きく下回った.咬合支持域では,支持がすべて残存している者がわずかで,支持を喪失した者が半数以上を占めていた.在宅者の残存歯は,後遺症に伴うADLの低下とともに口腔内ケアの不十分さが認められ,齲触や歯周疾患を進行を助長しているようである.服用薬剤の副作用との関連は明確でなく,第一要因は口腔清掃状態の不良であると考えられた.障害前から義歯を使用していないケースは,障害後さらに摂食可能食品の制限を強いられていた.義歯の必要性については,義歯使用の有無により影響された.そして必ずしも適正でない義歯が装着されていたとしても,本人の評価は比較的高いことが示された. 3.考察と今後 直接生命に関与しないためか,口腔内に関心がないのが現状で,加えて介補者の関心も低かった.義歯や残存歯に関する項目においても,在宅者側と歯科医側の評価に相違があった.しかし在宅での訪問診療のニーズは高かった.今後対象者を増やし,情緒に関する項目,社会的背景についても検討を加える予定である.
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