【目的】高齢者社会の到来に伴い在宅要介護者に対する歯科医療の対応は大きな課題であり、歯科医療のニーズが増加しており、医療の対応および問題点の把握は重要と思われる。今回在宅要介護者の口腔健康状態と身体的機能、とくに生活自立度について調査し、それぞれの関連性について検討を行った。 【方法】調査対象は岩手県大野村の在宅者63名(男32名、女31名、平均73.6歳)とした.全身状態に関する項目では、日常生活自立度(J〜C区分)、基礎疾患、障害区分を調査し、ADLについてアンケート調査を行った。口腔の診査項目については、総残存歯数、Eichner分類による咬合支持域、歯周疾患や齲蝕疾患、補綴状況について診査した。また義歯評価として義歯満足度や義歯使用状況に関する項目などについてアンケート調査を行った。 【結果と考察】調査より以下の結果を得た。 1.生活自立度で分類すると、生活自立者は24%、準寝たきりは38%、寝たきりは41%であった。 2.基礎疾患は脳血管障害が半数以上を占め、障害区分はその後遺症である肢体不自由が多かった。 3.Eichner分類でのC区分の割合は、寝たきり群と準寝たきり群で、生活自立群に比較して高かった。 4.歯根齲蝕は、準寝たきり群と寝たきり群で、生活自立群に比較し高い傾向を示した。 5.義歯使用に関して満足と回答した者は、生活自立群、準寝たきり群、寝たきり群の順で少なくなった。一方、歯を所有しているにもかかわらず未使用者の割合は逆に増加し、咀嚼に関して問題を有している者が多かった。これは事前訪問による聞き取り調査で、咀嚼障害はなかったとする結果とは異なった。 6.在宅歯科診療に対する希望は全体的に強く見られるものの、希望しない者の割合は寝たきり群で多かった。これは全身状態の低下とともに、口腔健康管理に対する本人および介護者の半ばあきらめ感が反映されたものと推測された。
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