本研究課題は、顆頭の骨変形を伴う顎関節の顆頭位をどのように考えるか、という問いに対してCTから得られる生体の骨形態像から光造形モデルを作製しその顆頭位の実体的評価を行うことである。 本年度はCT撮影と顎関節形態のオリジナルファイルおよびオリジナルファイルからDXFファイルを作製した。まず、26〜33歳の男性健常有歯顎者6名の顆頭安定位におけるCT撮影と、残存歯による咬合支持を失ったいわゆるアイヒナーのグループCに分類される多数歯欠損症例についてCT撮影を行い顎関節構成データのオリジナルファイルを作製した。症例は50〜75歳の男性2名、女性1名である。また、撮影時の下顎位はゴシックアーチを描記しアペックスの位置に規定した。症例での画像は顆頭の部位によりCT値が異なっており、健常者に比べ骨形態の輪郭が著しく不明瞭であった。そのため2値化してトレースする手法では形態の抽出が難しく、前後のスライス面の画像から推察して行った。 その結果、健常者の顎関節の骨関節隙をみると1〜2mmの隙間で関節窩と顆頭が対向する部位は関節の外側に多かった。また、欠損症例のうち1名では、片側の顆頭がいわゆる骨棘を呈していた。骨棘は水平面から観察すると顆頭中央部に存在し、関節窩と顆頭は骨棘の部分で最も接近し骨関節隙の様相も異なっていた。さらにこれらの形態情報は、リアルタイムグラフィックス上へ描出するためのオリジナルファイルからDXFファイルへ変換可能なことがわかった。 次年度は、DXFファイルからSTLファイルの製作および造形装置へデータを移行する予定である。
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