研究概要 |
被験者として顎口腔系に自覚的,他党的に異常を認めない男性健常有歯顎者14名(22-30歳,平均年齢24.9歳)を選択した。深部温測定に熱流補償型プローブを構えた深部体温計コアテンブCTM-204(テルモ・ジャパン社)を用いて,超音波照射に伴う深部温変化を終了60分まで測定した。超音波照射にITO US700(伊藤超短波社)を用い,照射部位は右側咬筋中央部とした。照射条件として,照射時間は5,10分間,照射強度は0.5,0.75,1.0W/cm^2の合計6条件を設定した。周波数3MHz,連続波で術者保持によるストローク法で照射を行った。また,痛みに関するアンケートを照射中および照射後に5段階のLikert型スケール評価のアンケート採取を行った。測定パラメータとして,安静時熱平衡体温,照射終了20,60分後の温度差(ΔT);上昇率ならびに減衰率を求めた。 1.0W/cm^2の強度で,照射側である右側咬筋の深部温は安静時において熱平衡から急速に増加して,そしてピークの温度から急速に減少した。他方,0.5W/cm^2の強度では,深部温は安静時において熱平衡から穏やかに増加して,そしてピークの温度から緩やかに下降した。平均ΔT20は,両方の強度に関して約0.4℃を記録した。平均ΔT60は,両方の強度に関して約0.2℃を呈した。分散分折の結果,ΔTならびに上昇率は,照射時間が長いほど高く,減衰率は照射強度が低いほど低くなった。また,痛みに関するアンケート評価において,0.5W/cm^2と1.0W/cm^2において有意差が認められ,1.0W/cm^2では早期に痛みを誘発するため,咬筋には不適切であることがわかった。以上の結果から,安全で温熱効果の高い照射条件は,0.5W/cm^2の10分間であることがわかった。
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