研究概要 |
正常口腔粘膜と,口腔粘膜癌,上皮性異形性,他の疾患の口腔粘膜微細構造の違いを明らかにするために,高品位マイクロスコープ(VH-5910)による観察をおこなった。まず,25倍〜175倍までの倍率が連続可変なズームレンズ(VH-Z25)をもちいた。観察は接触タイプと非接触タイプのいずれも装着可能だが,100倍を超えると「ブレ」の影響が大きく,接触タイプによる観察の方が容易であった。しかし,レンズ接触面積が大きいため,狭い口腔内に挿入し接触させることは,やや困難であり,観察可能な部位は頬粘膜の前方,舌縁の前方などに限られた。このため,接触面積の小さい固定倍率レンズをもちいることとした。使用した固定倍率レンズは20倍,50倍,100倍,200倍で,20倍は非接触タイプ,その他の倍率では接触タイプにて観察をおこなった。接触タイプでは汚染を防ぐためポリ塩化ビニール・シートで接触部を覆い口腔粘膜上を走査した。各倍率ごとの画像をビデオカセットレコーダーに記録し,静止画ビデオキャプチャーでコンピュータに取り込んだ。 成人健常者の頬粘膜,舌縁,口底、歯肉について口腔粘膜の観察をおこなった。20倍でも表在血管網の粘膜下層静脈は確認できるが,50倍で樹枝状血管,斜走血管が明瞭に観察され,100倍以上で上皮乳頭内ループ状血管(ループ状に走行する毛細血管)の観察が可能であった。また,50倍〜100倍で観察された表在血管網の構造的特徴は部位により異なっていた。頬粘膜は規則的に走行する細長い斜走血管が主体であったが,舌縁は太い粘膜下層静脈が目立ち,その間に短く細い樹枝状血管,斜走血管が観察された。口底は不規則に走行する樹枝状血管と,その先に樹実状に走行する短い斜走血管と上皮乳頭内ループ状血管が特徴であった。一方,歯肉においては,付着歯肉は毛細血管末端のみが点状に観察され,遊離歯肉は上皮乳頭内ループ状血管のループのみが観察された。
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