発音時の口腔機能を作動部位別に分類すると、鼻咽腔閉鎖機能、口蓋と舌との接触様式、口唇閉鎖機能の3区分への分類が可能である。各機能が何らかの関連性を保ち、最終的に統合されていると考えられ、特に両唇音や歯茎音等の破裂音発音時には、口唇閉鎖と鼻咽腔閉鎖との関連性が重要と考えられるがその詳細は不明である。 本年度は、両機能間の分析を行うため、現在保有している非侵襲性接触型軟口蓋筋活動測定装置(ポリグラフシステム:日本光電・RM6000)に、本科学研究費より購入した鼻咽腔閉鎖機能解析システムを組み込み、鼻咽腔閉鎖動態についての高次元の分析システムを構築した。本装置により軟口蓋と口輪筋の筋活動の測定に加えて、呼気鼻腔漏出量の同時測定が可能となった。 実験は、口蓋裂術後、鼻咽腔閉鎖機能不全を後遺し、その改善のためSpeech aidを装着している患者を対象として行った。尚、被検者には研究目的・方法等を十分説明し、承諾が得られた上で実験を行った。実験方法は、Speech aidのbulb中央部分を削除し通気できるようにした上で、その通気度を段階的に変化させ、人工的な鼻咽腔閉鎖機能不全状態をつくり、発音時の呼気鼻腔漏出量と口輪筋筋活動を同時に測定した。その結果、Bulbの通気度を段階的に増加させた場合、子音発音時に口輪筋筋活動が増大した。この現象は鼻咽腔閉鎖機能の増悪に伴い、口唇閉鎖機能が増強することを意味し、一種の代償機能と考えられた。本研究結果の一部を、平成11年9月 THE 4TH ASIAN PACIFIC CLEFT LIP&PALATE CONFERENCE(FUKUOKA JAPAN)において発表した。来年度においては、鼻咽腔閉鎖機能不全に対して、手術により鼻咽腔閉鎖機能を改善した場合の、術前術後における軟口蓋と口輪筋の筋活動を測定し、鼻咽腔閉鎖機能と口唇閉鎖機能との関連性を分析する予定である。
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