研究概要 |
1:局所誘導加温のため新しい磁性体であるデキストラン・マグネタイト複合体(以下DMと略)を臨床応用へ導くために、ハムスター担癌舌におけるDMの昇温効果を検索することを目的とした。 2:0.75% 9,10-dimethyl-1,2-benzanthraceneアセトン溶液により誘発されたハムスター担癌舌において加温実験を行った。鉄濃度56mg/mlのDMを腫瘍に局所注入した後、誘導加温を行い、腫瘍辺縁部と腫瘍中心部の温度変化を記録した。加温終了直後の担癌舌において、肉眼的、X線的および組織学的にDM分布を検索した。 3:(1)各群の平均温度値が43.0℃以上となるまでの時間(以下T^<43℃>と略)は、腫瘍辺縁部群(n=10)で180秒、腫瘍中心部群(n=10)で540秒であった。個々の症例における加温部位が43.0℃以上となるまでの時間(以下t^<43℃>と略)と腫瘍体積との関係では、腫瘍辺縁部のt^<43℃>と腫瘍体積との間に相関は認められなかった(Y=0.06X+162,R=0.198,P=0.587)。一方、腫瘍中心部のt^<43℃>と腫瘍体積との間には統計学的に有意な相関は認められないが(Y=0.34X+358,R=0.429,P=0.216)、腫瘍体積の増加に伴いt^<43℃>が延長する傾向が認められた。(2)DMを用いた誘導加温において、ハムスター担癌舌の目的とする加温領域は、選択的に43.0℃以上に加温され、癌温熱療法の適正温度である43.0〜45.0℃の範囲で長時間維持された。(3)連続切片における肉眼的所見では、腫瘍組織の中心部の小範囲にDMが欠如する非黒染部が認められた。X線的所見では注入部位に一致した、やや不均一なDM陰影が確認された。組織学的所見では舌筋内へ浸潤する扁平上皮癌の形成が確認され、その間質に茶色を呈するDMの均一な蓄積像が認められた。また、塊状に増殖する腫瘍細胞集団におけるDMの間質細部への蓄積像は認められなかった。
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