研究概要 |
c-fosは最初期遺伝子の一つで,末梢での刺激に応答して中枢の神経細胞に発現し,短期の細胞性応答を長期の細胞性応答に転換する際に働き,学習や記憶に関与すると考えられている.ところで疼痛刺激に対するc-fosの発現は中枢において神経ペプチドの一種であるdynorphinの産生変化を引き起こすことが明らかにされている.申請者は悪心誘発剤投与時中枢内にdynorphinが発現することで実際の悪心反応が引き起こされると仮定した.このため今年度の研究目的としては,c-fosの関与でdynorphinが中枢内に実際に発現するかを調べることにした. そこで以前より交配繁殖中であるc-fosノックアウト・マウスを使用し,悪心誘発物質投与時中枢でのdynorphin発現を免疫組織化学的手法で検索することとした.悪心誘発物質としては悪心.嘔吐反応を副作用とする癌化学療法剤の一種であるシスプラチンを用いた. 実験方法としては,野性型,ホモ接合型マウスにシスプラチンを各濃度で腹腔内投与し,種々の時間後組織の固定操作にはいり,延髄より上位でdynorphinの発現とその局在を1次抗体にanti-dynorphin Aを用い,両者の間で比較検索した. dynorphinの脳内蓄積には時間を要すと考えられ,シスプラチンの投与量,投与から環流固定開始までの時間等に各種の設定が必要であり,現段階では結果を出すまでには至っておらず,実験継続中である.
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