研究概要 |
近年、副作用がなく薬剤耐性癌にも有効であるという事で、癌ワクチン療法が脚光を浴びており、種々の癌特異抗原、癌拒絶抗原が同定されている。我々は唾液腺癌特異抗原を認識する単クローン抗体(5B-10抗体)を既に作製している。そこで初年度、この抗体をリガンドとしたアフィニティクロマトグラフィーにより5B-10により認識される抗原を分離した。5B-10抗原は、分子量約23kDの糖タンパクであった、さらにこの抗原はウエスターンブロット法あるいは蛍光抗体法により調べられた全ての唾液腺癌および胃と結腸の腺癌に発現を認めたが、他の腫瘍組織あるいは唾液腺を含めた正常組織には全く検出されなかった。ヒト末梢血単核球(PBMC)をin vitroにて種々の濃度の5B-10抗原にて6日間刺激し、回収したPBMCは、5B-10抗原陽性である唾液腺癌細胞(HSG,HSGAza1,AHSAza3,HSY)には強い細胞障害活性示したが、5B-10抗原陰性細胞株すなわち口腔扁平上皮癌細胞(BHY,HNT)、リンパ腫細胞(Daudi)および赤白血病細胞(K562)には障害活性は示さなかった。すなわち、5B-10抗原特異的細胞障害性T細胞(CTL)が誘導されている事が示唆された。さらにこの障害活性にはCD8+T細胞が深く関与している事も明らかとなった。現在、5B-10抗原で誘導されたCTLが実際にin vivoで抗腫瘍効果を示すかどうかを検証するために、ヒトPBMCを持続的に投与されたsevere combined immunodeficient(SCID)マウス(PBMC-SCID)にHSG細胞を移植し、5B-10抗原によるワクチン療法を施行し、その効果を判定中である。
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