研究概要 |
本年度は、昨年(初年度)検索した5B-10ワクチンの5B-10抗原特異的CTL誘導活性を確認した上で、これが実際にin vivoで抗腫瘍効果を発揮するか否かを検討するため、SCID-PBMC/huマウスを用いて検索した。SCID-PBMC/huマウスは、2GyのX線照射されたsevere combined immunodificient(SCID)マウス(すなわちT細胞およびB細胞の機能が欠如した免疫不全マウス)に、ヒト末梢血単核球(PBMC,2.5×10^7)を腹腔内に移植する事により作製した。SCID-PBMC/huマウスに、5B-10抗原陽性細胞株HSGならびに5B-10抗原陰性細胞株BHYをマウス背部皮下に移植すると、これら腫瘍細胞は生着し、増殖する。5B-10抗原5ug、10ugあるいは20ug投与する事により、HSG腫瘍の増殖は、5B-10抗原の投与量に依存して有意に抑制された。BHY腫瘍の増殖においては、全く影響を及ぼさなかった。さらに、これに現在臨床において高頻度に使用され、有効例が多数報告されている、溶連菌由来非特異的免疫賦活剤OK-432を併用する事により、その効果は有意に増強された。さらに、この時、腫瘍浸潤リンパ球および所属リンパ節細胞の、5B-10抗原特異的キラー活性の上昇も確認された。マウス血清中のサイトカイン濃度を検索したところ、5B-10抗原投与マウスにおいで、血清中のTH1サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-12およびIL-18)濃度の上昇が認められた。5B-10抗原投与は、キラー細胞活性の増強のみならず、Th1(1型ヘルパーT)細胞の誘導にも、重要な役割を演じている事が明かとなった。昨年度および本年度の実験結果より、唾液腺癌特異抗原5B-10を用いた癌ワクチン療法が臨床においても有効である事が強く示唆された。
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