骨芽細胞はわずかな海綿骨細片や骨髄組織からの単離、培養が可能であり、生体内より分離した骨芽細胞をin vitroで増殖、分化させた後、これを適切な担体とともに移植し、生体内で骨を形成させることができれば、極めて有用な新たな骨再建方法の確立に結びつくと考えられる。本研究は骨芽細胞による生体内での骨形成機構を解明し、培養骨芽細胞の骨再建材としての可能性を探ることを目的とする。 本年度は、 1.骨芽細胞による顎骨再建の際に不可欠となる担体を開発する目的で、種々の担体内における骨芽細胞の増殖、分化能を検索した。 タイプI型コラーゲン、アパタイト、トリカルシウムホスフェイトを担体として骨芽細胞を三次元培養し、細胞数の変化を検索することにより増殖能に対する影響を検討した。さらに骨芽細胞表現形質(アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、オステオネクチン、オステオポンチン、タイプI型コラーゲン、BSP)のmRNAの発現をノーザンブロット法およびRT-PCR法により検索することにより細胞分化への影響を検討した。その結果、各材料ともに細胞数、表現形質の発現に対しては有意な影響は与えなかったことから、担体として有用な材料であることが明らかとなった。 2.三次元培養下における骨芽細胞の分化促進因子についても検討を行った。 三次元培養した骨芽細胞の培地中にステロイドの一種であるデキサメサゾン、血小板由来成長因子(PDGF)を加え、前述の骨芽細胞表現形質のmRNAの発現をRT-PCR法により検索し、さらに石灰化への影響を調べた結果、デキサメサゾン、PDGFはともに骨芽細胞表現形質のmRNAの発現および石灰化を促進したことから、これらは有効な分化促進因子であることが確認された。
|