ペポシンはカボチャ果肉より単離された植物由来のI型リボソーム不活性化タンパク質(RIP)であり、ラット肝臓由来の28SrRNAの5'末端から4324番目のアデニンとリボース間のN-グリコシド結合の加水分解を触媒(脱アデニン化)し、リボソームを不活化させる。本研究ではタンパク質リガンドが細胞上の特定の受容体に結合すると、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれる性質を利用して、このリガンドにtoxin(ペポシン)を結合させ、選択的細胞毒性により癌細胞を死滅させることを目的の1つとしている。今年度は口腔癌培養細胞に対するペポシンのRNA N-グリコシダーゼ活性を、HPLC-UV検出法を用いて解離したアデニンを直接測定する方法で測定を行った。口腔癌細胞由来のrRNAをペポシンと37℃で反応後、反応液をHPLCに注入した。固定相には陽イオン交換樹脂を、移動相にはリン酸カリウム緩衝液を用い、溶出されるアデニンをUVモニターで検出した。陽イオン交換樹脂によりアデニンは検出感度2pmolで検出され、ペポシンが口腔癌細胞由来rRNAに対してRNA N-グリコシダーゼ活性を有することより、選択的細胞障害の可能性が示唆された。近年、口腔癌細胞においてEGF受容体(EGFR)のover-expressionが報告されており、今後は適当なリガンドを選択し、ペポシンと種々の受容体リガンドの架橋体を作成して、架橋体の安定性及び細胞内への取り込みを確認した後に口腔癌細胞への細胞毒性を検討する予定である。また研究者は白金製剤シスプラチンをはじめとする各種抗癌剤の細胞内情報伝達系に対する影響も検討しており、今後はペポシンの選択的細胞毒性に抗癌剤との相乗効果を期待する、新規化学療法の開発も検討していく予定である。
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