口腔癌細胞株及び口腔粘膜培養細胞におけるサイトケラチン(CK)の遺伝子発現をRT-PCR法により検出した。口腔扁平上皮細胞12株および健常者歯肉より単離したヒト歯肉由来ケラチノサイト3例、健常者皮膚1例を対象とした。CK13、CK19、CK18およびCK14発現は、正常検体4例を含め、発現強度に違いがあるものの、全てに発現が認められた。CK10発現は、皮膚では発現を認めたが、歯肉由来ケラチノサイトを含め口腔組織では発現が認められなかった。また、サイトケラチン発現の上皮組織特異性を調べるために、健常人末梢血3例におけるCK10、CK13、CK19発現を検索した。従来の報告では、末梢血中の疑陽性CK19発現が観察されているが、今回の実験では、全ての検体に明らかな発現を確認した。一方、CK13は全検体で明らかな発現を認めなかったが、検出限界程度の微弱な発現が観察された。また、担癌患者頚部郭清時に摘出したリンパ節を対象とした上皮性マーカーSCC、CK13及びCK19遺伝子発現検索では、SCC陰性のリンパ節において、CK13およびCK19の発現が検出された。さらに、全検体において、微弱ながらCK13発現が検出された。これらの発現は、上皮性細胞の混入によるものであるか、あるいは、分化や癌化特異的に誘導ではなく、特異性の消失による蛋白発現を誘導しない、仮に誘導しても機能的な遺伝子発現が誘導された可能性が考えられる。また、CK発現は上皮細胞の分化のマーカーというよりも培養条件下によってその発現するフェノタイプを変化させている可能性がある。今後、培養条件の変化に伴うサイトケラチンの発現誘導の検索を行う。
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