障害者の歯科治療時における抑制帯、開口器装着が呼吸・循環に及ぼす影響について調べるために、初年度は実験機器を設置・調整し、予備研究を行った。 まず、呼吸についてはポリグラフ内にレスピロメーターの測定ユニットを設置し、ニューモタコゲラフにより一回換気量、呼吸数、分時換気量、胸郭コンプライアンスを、フェイスマスクまたはネーザルマスクから測定できるように調整した。また経皮的酸素飽和度を指先から、筋電図を顎舌骨筋などの呼吸補助筋から導出できるようにした。 開口器は数種類のものを使用し、軽度〜最大開口まで3段階程度の開口度に応じて呼吸機能がどのように変化するかを数人の健康被験者で調べた。その結果、体位などでも変化する可能性があるため、今後は仰臥位、セミファーラ位、座位で検討する必要があることが解った。 次に、循環への影響を調べるために以下の設定を行った。できるだけ非侵襲的な方法で循環血液量の変化を測定するために、トノメトリー法による連続動脈圧血圧の周波数解析から心拍出量を推定するようなシステムを設定した。健康被験者で実際にネットで強く圧迫した時の心拍出量の変化を検討したが、一過性の変化はあるものの、大きな変化ではなかった。この結果から、検出精度の高い機器が必要と考え、現在、色素を静脈内投与して末梢で循環血液量を推定できる装置の使用を検討中である。 初年度の予備実験から、過度の開口は呼吸機能ばかりでなく、嚥下反射にも影響を与える可能性が示唆された。また、抑制帯は筋の緊張がある場合では一過性の変化を代償できるが、静脈内鎮静法などで筋が軽度弛緩している状況では、代償機構が正常に働くかどうかは疑問で、次年度はこの点についてさらに検討を加える予定である。
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