健常者および筋性顎関節症患者における、症状と筋緊張抑制機能(ES2)との関連性の検討を行った。 ES2測定の概略;1、最大かみしめ中に電気刺激を与え、咬筋、側頭筋表面筋電図を記録した。 2、筋電導出と同側の下顎神経を頤部で刺激した。 3、ES2は筋電の原波形をAD変換しコンピューターに取り込み、10回分を正規化、平均処理し、刺激前50ms間の積分値と刺激後50msから50ms間の積分値を求め、その比から筋活動の抑制率を求めた。 実験的筋痛誘発試験の概略;最大かみしめ力の10%程度で30分間、持続かみしめを行わせた。アルゴメーターで試験前後と24時間後に筋圧痛閾値を測定し、24時間後までの筋痛発現の有無と共に、筋圧痛の変化を評価した。以上の実験により得られたES2抑制率と筋症状との関連を検討した。 結果;筋症状を主とする顎関節症患者のES2は緊張型頭痛と同様に、健常者と比較して抑制率が低下する傾向であった。またこのとき、ES2の潜時の長さおよび異なる筋での同期したES2の潜時に差が認められなかった。さらに筋性顎関節症患者群では対照群に比べて、ES2の抑制率が低いものが多く、さらに筋痛誘発試験により筋痛が生じたものが多かった。 顎関節症における筋症状の発症原因あるいは永続化因子として中枢性筋緊張抑制機能の障害が関与している可能性が示唆されると共に、ES2は筋緊張抑制機能の評価検査になりうることが示唆された。
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