研究概要 |
口腔扁平上皮がんは角化性病変であり、悪性化する前段階の角化性病変の診断で悪性化のリスクを的確に評価することは、臨床医学の発展に大きく寄与するものである。最近の研究で口腔扁平上皮がんの発がんには染色体9番の欠失が報告され,注目されている。特にこの領域には、がん抑制遺伝子であるP16がコードされている。P16の不活化は前がん病変でもみとめら、その機構が染色体の欠失とpromoter領域のメチルが関与するものと考えられている。しかし、前がん病変の発がんには不明な点も多く、特に前がん病変からがんに変化するものと、そのままで推移するものとを、評価する指標はいまだ確立されていない。今回、これらのことを踏まえて、前がん病変とP16の遺伝子異常の関係を明にする目的で、下記の実験を計画した。まず、実際の生体組織内での遺伝子異常と臨床的意義を検討する前に、in vitroでの検討を開始した。口腔扁平上皮がんから樹立した細胞株、8種類を培養可能とした。これら、細胞株を用いて、P16の遺伝子産物の局在について検討した。細胞株の種類によって、核に局在の強いものと細胞質に局在の強いものが観察できた。現在、局在の違いと、遺伝子変化、promoter領域のメチル化について、genomic DNAを抽出し検討中である。また、実際の臨床例についてホルマリンパラフィン切片を用いて、局在と発現状況と予後との関係を検討している。
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