正常ラット顎関節、特に滑膜におけるμオピオイド受容体(MOR)の局在分布をin situ hybridization法、および免疫組織化学的染色法(PAP法)により検討した。In situ hybridization法は、同受容体に特異的と考えられた領域(45base)を選択し委託合成したジゴキシゲニン標識RNAプローブを用い、非放射線性ジゴキシゲニン法により施行した。ラット顎関節において、MORmRNAのシグナルは、前方および後方滑膜の血管周囲に認められ、形態学的には同部位に分布する神経終末やマクロファージに局在すると考えられた。免疫組織化学的染色結果も同様の結果が得られ、蛋白レベル、mRNAレベルの両方においてMORの存在が確認された。以上の結果より、MORが、顎関節における末梢性鎮痛機構に関与することが示唆された。 さらに、Mutoら(Oral Surg Oral Med Oral Pathol.1998;86:534-40)が報告した如くに、強制開口を施したラット顎関節滑膜組織において、フィブリンの沈着、滑膜細胞の多層化などの炎症性変化が生じることを形態学的に確認した。現在、同滑膜におけるMORの局在分布、およびコントロール群ラットとの比較に関して研究中である。 δオピオイド受容体(DOR)に関しては、免疫組織化学的にその局在を認め、その分布パターンはMORとおほぼ一致していた。今後、DORmRNAの発現に関してin situ hybridization法により研究予定である。
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