健康成人ボランティアに対し、プロポフォールを投与した際の回復過程、特に平衡機能の回復過程について注目し観察を行い、従来歯科臨床において頻用されているミダゾラムとの比較を行った。 【方法】静脈路確保後モニタリング(血圧、心拍数、経皮酸素飽和度測定)下にて、呼名反応とベリルの徴候を指標とし、至適鎮静状態が得られるまでプロポフォールの投与を行った(P群:5名)。至適鎮静状態が得られたところで投与を中止し、投与中止から10分毎にRomberg's test、閉眼単脚起立テスト、マンテストにより平衡機能回復の観察を行い、Trieger dot testにより鎮静状態回復の観察を行った。 ミダゾラムも同様に、至適鎮静状態が得られるまで投与し(M群:5名)、同測定項目を観察した。 【結果】P群の平均プロポフォール投与量は88±8.4mg(1.3±0.12mg/kg)であった。Romberg's testは、投与中止10分後には全例回復し、閉眼単脚起立テストは22±4.5分、マンテストは18±4.5分であった。Trieger dot testは24±5.5分には投与前と同程度に回復した。 M群の平均ミダゾラム投与量は4.0±0.3mg(0.058±0.005mg/kg)であった。Romberg's testは、投与中止後20±11.4分、閉眼単脚起立テストは54±8.9分、マンテストは56±5.5分で投与前状態に回復した。Trieger dot testは40±7.1分で回復した。 【考察】P群の回復は、すべてのテストにおいてM群より早期であることから、プロポフォールは外来患者に対する静脈内鎮静法施行時に安全に使用できるものと思われる。しかし本研究は健康成人に対するボーラス投与であるため、今後臨床例に対する持続投与時の回復過程についての検討が必要である。
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