研究概要 |
Plasminogen activator(PA)/plasmin系はmatrix metalloproteinasesやprekallikreinを活性化することにより,細胞外基質の分解や炎症の進展に関与していると報告されている.本申請では,顎関節症の病態とPA/plasmin系の関わりを明らかにすることを目的とし,顎関節滑液中のPA,plasmin,kallikrein活性を測定した.対象は顎関節症患者の治療経過中に上関節腔より希釈法にて採取した滑液118検体で,正常な顎関節を有するボランティアからの13検体を対照群とした.対照群では各酵素活性はすべて検出限界以下であった.対象のPAとplasminとの間に正の相関(r=0.806,p<0.001)を認めた.PA活性陽性であるがplasmin活性を認めない検体にplasminogenを加えてassayするとplasmin活性の上昇を認めた.PA活性を認めない検体にplasminogenを添加しても,plasmin活性の上昇はなかった.plasminとkallikreinの間に正の相関(r=0.407,p<0.001)を認めた.plasmin活性が高いがkallikrein活性は低い検体にprekallikreinを加えてassayすると上昇率に差はあるが,kallikrein活性の上昇を認めた.plasmin活性を認めない群でも,prekallikreinを添加すると,kallikrein活性は上昇した.これは,prekallikreinの活性化にはplasminの他にHageman factorなどの活性化因子が存在することが示唆された.よって,PA/plasmin系は,顎関節症に関与していること,また,その酵素活性以外に前駆体の変遷も考慮に入れる必要があると示唆された.
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