カニクイザル3匹を実験動物に用い、ネンブタールによる全身麻酔下に片側顎関節包を露出、上関節腔を解放し、関節円板の前方端部にナイロン糸を穿通させ、徒手的に関節円板を前方牽引し、関節結節最下点まで転位させた関節円板前方転位モデルを制作した。モデル制作後1ヶ月の時点で、全身麻酔下に両側の顎関節上関節腔にカニューレ針を2本挿入し、その一方より生理食塩水をマイクロシリンジより注入し、他方を圧力トランスジュサーに接続し、他動的な顎運動時の関節内圧力変動を測定した。円板転位側(モデル側)、非円板転位側ともに噛みしめ位(徒手による歯芽接触位)に最大圧力を呈したが、関節円板転位側と非円板転位側との間で有意に関節円板転位側で関節内圧上昇を認めた(円板転位側:165±34mmHg、非転位側:85±37mmHg)。最大開口位では関節円板転位側と非円板転位側ともに陰圧を呈した(円板転位側:-52±8mmHg、非転位側:-46±15mmHg)。徒手的開閉口運動中における関節内圧の変動様式については、関節円板転位側と非円板転位側との間で大きな差はみられなかった。以上の結果より、関節円板転位の有無により噛みしめ時において顎関節内圧が変動するが、顎運動中においては大きな差はないものと思われた。現在、関節円板転位側における経時的に下顎頭形態変化を呈した例における、関節円板転位側における関節内圧の経時的変動については検討中であるが、経時的(関節円板転位モデル制作後約10か月)に下顎頭変形を呈した1例においては、モデル制作後1か月の時点における関節円板転位側における噛みしめ時の関節内圧値は減少傾向を認めた。
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