ラットの顎舌骨筋に筋紡錘が存在しその筋紡錘求心線維の細胞体は三叉神経中脳路核内に由来することは、これまでに電気生理的所見およびHRP神経標識法などを用いた光学顕微鏡的所見によって明らかにされた。そこで今回の研究で、三叉神経中脳路核内に局在する顎舌骨筋筋紡錘求心線維の細胞体が視床下部などの上位中枢からの入力を受けているかを検討した。 実験にはWistar系ラットを用いた。顎舌骨筋に分布する神経枝にHRP-WGAを注入した。ラットを48時間生存させた後、灌流固定を行い、脳幹を摘出した。厚さ80μmの連続切片を作製し、tetramethylbenzidinを用いてHRPを可視化した。三叉神経中脳略核のHRPに標識された細胞を含む標本を通法に従いエポン樹脂に包埋し、超薄連続切片を作製した。三叉神経中脳路核内のHRP標識細胞およびその周囲の微細構造を電子顕微鏡にて観察した。 HRPに標識された顎舌骨筋筋紡錘求心線維の細胞体10個について検討したところ、合計75個のシナプス接合が観察された。シナプス様式は軸索終末が細胞体のspine様突起の基部に接合していた。それらの軸索終末の形態は、多くがround vesicleのみを含むタイプであった。以上のの所見から、顎舌骨筋筋紡錘求心線維の細胞体は他のニューロンからの入力を受けることが明らかとなった。
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