口腔癌の治療は、機能温存や審美的な問題から従来の治療だけでなく、新しい治療法の開発が望まれている。われわれは、血管内皮細胞の増殖に抑制的に作用する薬剤であるTNP-470の口腔癌に対する抗腫瘍効果と放射線との併用による併用効果を検討した。 ヒト口底癌由来KB細胞2×10^6個を5週齢BALB/cヌードマウスの背部皮下に移植し、TNP-470は100mg/kgを腫瘍内に週3回投与、放射線療法は1回2Gyを週3回照射とした。実験群は Group1 未治療群 Group2 TNP単独投与群 Group3 放射線単独治療群 Group4 TNP+放射線同時治療群 Group5 TNP先行放射線治療群 Group6放射線先行TNP投与群 とし、治療終了後2週間までの縮小率とH-E染色、PCNA labelling index、Bcl-2発現、TUNEL法を用いたapoptosisの発現を検討した。 その結果、TNP単独治療群と放射線治療群は、著明な腫瘍縮小を認め、その縮小率はそれぞれ64.9%と69.4%であった。両治療を併用した場合、さらなる抗腫効果が得られ、同時治療群では76.1%の縮小率であった。TNP単独治療群は腫瘍実質での壊死と炎症性細胞浸潤が、放射線単独治療群では細胞質の変性が認められ、同時治療群では高度の壊死がみられた。RCNA labelling indexでも、同時治療群は19.2%と最も低い値を示し、apoptosis indexでは、TNP単独治療群、放射線単独治療群がそれぞれ27.8%、25.5%であったのに対し、同時治療群では、59.4%を示し、両治療によるapoptosis誘導能の相加効果を示した。また、いずれの治療でもBcl-2の発現は認められなかった。 現在、実験条件のさらなる検討とKB細胞のコルヒチン耐性株であるKB-Clと当科で樹立した放射線耐性株であるN-10での比較実験を行っている。
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