生理的歯根吸収時における乳歯歯根吸収組織の細胞組織化学的変化の検索 1.実験動物には、ウサギを用い、生後2、4、6、8、12、14、21日目に固定後、下顎骨を摘出し、第一.第二乳臼歯部歯根吸収組織の脱灰切片を作成し、同部位を以下の方法で観察した。TRAPase、ALPaseによる酵素組織化学、カテプシンK、PCNA、オステオポンチン、BMP-2、BMP-4、ODF、OCIFなどの免疫組織化学、および微細構造学的観察である。特に、ODF陽性を示す一部の未分化間葉系細胞(セメント芽細胞や線維芽細胞など)の分布とTRAPaseやカテプシンK陽性の破歯細胞の分布には、相関性が認められた。ALPase、PCNA、BMP-2、BMP-4およびオステオポンチン陽性を示す未分化間葉系細胞の分布は、乳歯根と永久歯胚が近接する部位で特に強い反応が認められ、破歯細胞が集中する部位とも一致した。また、微細構造学的観察では、破歯細胞と未分化間葉系細胞の間に、細胞間接触が認められた。OCIFに関しては、特異反応は検出されなかった。以上のことから、永久歯萌出によるメカニカルなストレスが未分化間葉系細胞の分化を促し、ODFを介して破歯細胞が誘導される可能性が示唆された。 2.後継永久歯胚の摘出を行い、乳歯歯根吸収組織に及ぼす影響の検索 実験動物には、生後6日齢のウサギを用い、下顎第一.第二小臼歯歯胚の摘出を行い、術後1、2、3、5、7目に固定後、下顎骨を摘出し、第一.第二乳臼歯部歯根吸収組織の脱灰切片を作成し、乳歯歯根直下組織の観察を行った。これまでの基礎実験等で、肉眼解剖学的な後継永久歯胚の位置ならび周囲組織の性状をよく理解していたが、術式の確立にかなりの困難を伴っており、現在も進行中である。
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