歯根未完成である生後4周齢のラット上顎第1臼歯を脱臼・再植し、その歯髄・歯根膜における神経再生、免疫担当細胞の動態を光学顕微鏡にて検索した。 再植後3日目で、抗原提示細胞を認識するOX6免疫陽性細胞、単球系細胞を認識するED1免疫陽性細胞が歯髄象牙質境に多数集積し、歯髄組織の変性に伴い露出した象牙細管内に細胞突起を伸ばしている像も観察された。7日目では、歯冠歯髄で神経の再生が進行すると同時に、修復象牙質の形成が開始し、その部位ではOX6陽性細胞・ED1陽性細胞は減少していた。再植14日後では、多量の修復象牙質形成が見られる群と、歯髄組織が骨様組織に置換する群に分けられ、後者では歯髄全体にED1陽性細胞の集積が継続していた。 以上より、これらの歯髄免疫担当細胞は、歯髄変性時に歯髄象牙質境に一時的に出現し、最植後の初期免疫応答に関与するだけでなく、新生象牙芽細胞の分化に重要な役割を果たしていることが示唆された。 今後は、抗原提示細胞の微細構造学的変化を電子顕微鏡レベルで検索する。また、胎児の発生に関する最近の研究で、将来、骨ができる部位に相当する間葉細胞にPAS(過沃素酸シッフ)陽性細胞が出現すると報告されていることから、本実験群にもPAS染色を行い、修復象牙質形成群と骨置換群のメカニズムの違いを検索する予定である。
|