研究概要 |
矯正的歯の移動による痛みと不快感は歯科矯正治療上の解決されるべき問題点の一つである.しかしながら,最近まで歯の移動による痛みの中枢神経系への影響についてはあまり検討されてこなかった.本研究の目的は,ストレス形成や痛みの制御に重要な役割を果たすノルアドレナリン,ドパミン,セロトニンなどのモノアミンが,歯の移動による痛みに対してどのような役割を果たしているかを解明することである.そこで,これを目的として以下の実験を行った. 7週齢wister系ラットの上顎第一臼歯と第二臼歯の間の歯間部に矯正用エラスティックを挿入し,片側のみ実験的に歯の矯正移動をおこなった.歯の移動開始12,24,48時間後にラットを屠殺し,素早く脳を取り出し,氷上でガラスナイフを用いて延髄を取り出し超低温冷凍庫にて-80度にて保存する.得られた分画試料を調整した後,ECD付きHPLCに注入する.参照電極はAg/AgCl電極,作用電極はグラファイト電極を用い,過電圧は450mvに設定し,セロトニン,ノルアドレナリン,ドーパミン,またそれらの代謝物である5-HIAA,MHPG,DOPACの濃度を経時的に測定することによって,ラットの中枢神経系の各部位における神経伝達物質の産生および代謝について検討を行った. その結果,歯の移動開始24時間以降において,セロトニン,ノルアドレナリン,ドーパミンのいずれにおいても産生量が有意に増加し,モノアミンが,歯の移動による痛みに対して制御をおこなっていることを示した.この成果はJournal of Dental Researchに投稿中である.セロトニンについて詳細な検討もしており,中脳において代謝が亢進することがあきらかにし,現在投稿準備中である.
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