研究概要 |
歯周組織を構成する細胞は口腔内に常在する細菌の菌体成分や菌体外産物のなどさまざまな刺激を受けている。歯周組織構成細胞がこれらの刺激に対して反応し、種々の炎症性サイトカイン(inflammatory cytokine)やマトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase,MMP)を分泌することによって、細胞外基質(extracellular matrix,ECM)が分解され、歯周病が発症するのではないかと考えた。そこで、歯周病関連細菌の菌体成分でヒト歯肉上皮細胞および線維芽細胞を刺激して産生されるMMPについて検討した。ヒト歯肉上皮細胞はMMP-9およびMMP-1を分泌し、炎症性サイトカインIL-1αやPorphyromonas gingivalisのfimbriae、Prevotella intermediaのLPS等歯周病関連細菌の菌体成分の刺激によってその分泌は亢進した。一方、歯肉線維芽細胞はMMP-2およびMMP-1を分泌し、TNF-αやIFN-γのサイトカイン刺激ではその分泌は亢進したが、菌体成分刺激には明確な応答は示さなかった。MMPは不活性のプロ型として分泌され種々のプロテアーゼで活性化型に変換される。そこで、歯肉上皮細胞においてMMPによるECM分解系のカスケード亢進に関わる分子の発現を調べた。すると、歯肉上皮細胞はプラスミノーゲンアクチベーターのmRNAを発現することが確認された。これらの結果から歯肉上皮細胞は歯周病発症に深く関与していることが示された。
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